カウントダウン

誰にも期日はわからない

PET検査

レントゲンで骨転移が発覚した翌日、私はPET検査を受けに行くことになった。自宅からだと片道4時間かかるため、病院近くのホテルに一泊した。文字通り一睡もできなかった。せめてモーニングを楽しめれば良かったのだが、検査の6時間前には食事を済ませろと書いてあったので、それはできない。悔し紛れに夜中3時にコンビニに行って、食べたいものを片っ端から買ってやった。チキンパスタやら納豆巻きやら、果ては酢だこやミミガーまで。さすがにビールはやめたけれど、好きなだけ食べてから病院へ向かった。

そこはPET検査だけをする病院らしく、中にいるのは同じ検査をする人のみだ。受付で問診票への記入を求められていると、隣におじさんが立った。

受付の方が笑顔で尋ねる。

「こちらは初めてですか?」

おじさんは言った。

「こんな検査、何度も受けてたまるかよ!」

素晴らしい返しだ。

思わず「そうですよね!」と言いたくなったが、我慢して待合室のソファに座る。真前にあるスクリーンには、水泳が流れていた。そういえば、オリンピックが開催していたなあとぼんやりと眺めながら待つ。

やがて名前を呼ばれて問診となった。落ち着いた雰囲気の女医さんがいくつか説明をし、質問もされた。淡々と応答していたら、いきなり先生の顔色が変わる。マスク越しにもわかる表情の変化にびくついていると、

「朝の3時に食事したの??」

と聞かれた。笑って誤魔化すしかない。

その後、検査室に向かったのだが、まるで近未来の宇宙ステーションのようだった。スマホが持ち込めず、撮影できなかったのが惜しいくらい。静まり返った検査場は、塵一つないのではと思わされるくらいに浄化されていた。

着替えを済ませ、スリッパを2度履き替えて2階に上がり、注射を受けて待つこと1時間。ようやく検査が始まった。巨大な筒状の機械に入り、微動だにしないまま30分。大きな音がしていたというのに、昨夜寝ていなかったおかげか熟睡していた。

その後、薬が抜けるまで別室で30分待ち、再び着替えて娑婆世界へと帰った。

検査費は3割負担のため、約3万円。高い。

リュープリンよりも高いものがあったとは。

結果として、恥骨と坐骨の他に、右肩甲骨の転移を発見できたから良かったのかもしれないが、どうせ3万使うならもっと楽しいことに使いたかったと思った。